バイヤーズ ガイド

・・Nとより良く出会い、そして付き合うために・・



はじめに・・・

まず、このコーナーをお読み頂くにあたり、以下の点について予めご理解をお願いします。

ここではホンダNシリーズに関する一般的・基本的な構造・性能・誕生やその歴史的な生い立ちと いった、既に多くの書籍や資料等で紹介されている内容について改めて重複する記述は致しません。
Nシリーズのラインナップについては、当クラブサイト上の 『 ホンダN360クロニクル 』 をご参照下さい。
また、Nシリーズのヒストリーに関しては、三樹書房 刊 『ホンダ360ストーリー・小さな巨人』 の中の 吉田匠 著『ホンダミニ・ストーリー 3m×1,3m のマキシマムを追って』に詳述されて居りますのでそち らをご参照下さい。   三樹書房ホームページ

購入を考える前に

先ずはじめに申し上げたいのは、これから新たにNを所有し維持して行く事はかなりの困難が予想され、 相当の覚悟が求められる、という事です。現在、国産旧車は部品供給という、その存在に関わる重要な点に おいて極めて危機的状況にありますが、ホンダも例外ではなく日に日にそれは悪化して行くばかりです。

21世紀を迎え、各自動車メーカーは生き残りを賭け熾烈な戦いを繰り広げており、40年以上前の それも現実に何台が存在しているのか分からない車達の為に採算に合わない部品供給を続ける事は 非常に困難であり、もはや望むべくもありません。

同じホンダでも『S』のように市場人気も高く専門ショップの存在する車種においては、各店に部品の ストックがあったり、またオリジナルパーツの供給等が期待できますが、『N』の場合は『軽』である事 や、かつての欠陥車問題(結果的に裁定はシロであり、この問題は単に技術的な部分にとどまらず、当時 のホンダの販売戦略上の軋轢等も絡んだものである。詳しくは、三樹書房 刊 中部博 著『定本 本田宗一郎伝』、 文芸春秋 刊 佐藤正明 著『ホンダ神話・教祖なき後で』を参照)等のマイナスイメージにより、未だ旧車 における市民権を得難い状況で、市場価格も安く従って採算性等から専門に扱うショップ等も殆ど無い為、 そういったルートからの部品供給は期待出来ません。

当クラブとしては、そんな状況を少しでも打開すべく欠品パーツの製作を微力ながら進めておりますが、 小ロット製作による必然的な高価格化や、その資金調達等、非常に厚い壁を目前にしており、また高々 数十名規模の1クラブの活動には当然ながら限界があり、困窮した部品状況を根本的に解決するには遠く 及びません。
こういったNを取り巻く現在の状況を先ず十分理解頂いた上で、Nの所有を考えて頂きたいと思います。

初歩的な事ですが、雑誌の広告等にある『レストア済み』という表現はとても曖昧で、本当にボディー修復 やメカニカルメンテナンス等を入念に行い、相当のパーツを交換してほとんど新車に近い状態の車も中には あるのでしょうが、しかし大抵の場合、外装を軽く塗り替え、当座不具合な個所を修正・修理した程度のも のが多いように思われます。
また個人売買等の場合は、前オーナーが長年慈しんで来た車を手放す、という事例は少なく、むしろ安直に 手に入れた車が手に負えなくなり売りに出される、といったケースが多いように感じられます。従って当然 というか必然的に入手後、不具合が出て来る訳で、これは現行の新車でも機械物である以上無いとは言えま せんが、旧車の場合はまず必ず壊れると覚悟しておくべきです。

過去の経験から『N』の場合、軽い気持ちで入手したものの(今でもかなり安く手に入るケースがあり、数 万円や中にはタダ同然=一升瓶1本と交換、などという話も・・)、いざ故障が出てパーツを手に入れる事 が出来ず、また一般の修理工場では手に負えないため断られる、というパターンが多く、クラブに相談され てくるというケースがままあります。そして、エンジン修理等で最低20〜30万円はかかる、という話を すると、それだけで驚いてしまい、中には、それじゃあ車を引き取ってくれないか、と言われる方まで居ら れます。(勿論、そういったご希望には応じられませんのでお断りしています)

またNを買って取り敢えずクラブに入ったものの、ほとんど活動に参加されず、いざNが不調になると技術 的なアドバイスや部品を供給して欲しい、といった要求を出され、結局は維持し切れずにNを処分し退会し て行かれるケースが少なからずあります。これではNとオーナー双方にとって共に不幸な結果になってしま います。

我々のクラブはNを愛好する者の親睦団体であって、営利を目的とした企業の外郭団体ではありませんから、 残念ながらすべてのNのオーナーの方々のご希望には添えるものではありません。Nという車を通じて人間的 な交流を深め、そして愛すべきNを末永く維持する為にメンバー達が知恵を出し協力しあう、というのがクラ ブの本旨で、実際に主力で活動しているメンバー達は当然ながらすべて無報酬です。クラブとしては、より多 くのNオーナーの要望に出来るだけ応えたいと思ってはいるものの、その力や範囲には限界がある、というの が現状なのです。

悲観的な事ばかりお話しましたが、しかしこれはこれからNの世界に入ろうとする方には是非理解しておいて 欲しい事ですし、また既にNを所有されている方にも十分承知頂きたい事柄です。決して明るいとは言えない Nの将来を敢えて受け入れ、その上でなおNに楽しみを見出せる、むしろそういった状況を逆手にとって楽し みに変えられるくらいの気概を持って欲しい、と思うのです。

Nは何より楽しい車です。現代車には無い素朴な走る事の喜びを与えてくれる車、といえます。ホンダが四輪 の世界に本格的に進出しようとする意気込みが随所に集約された車で、その小さく愛らしいボディには宗一郎 氏やその薫陶を受けた沢山のエンジニア達の夢や思いがぎっしりと詰まっています。そんなNの生い立ちやヒ ストリーも含めて、十分楽しみそして堪能して頂く事を願ってやみません。


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